今回、ANAホールディングス(全日空)について、海外渡航、国内渡航が大きく制限されている中で分析をしていきたいと思います。
【財務分析】成長性
企業の売上高や営業利益などの変化を分析します。
有価証券報告書、決算説明資料などで調べてみましょう。
<ポイント1>営業利益の大きな落ち込み
2020年1月くらいから、海外渡航自粛を始めた人たちが多いため、2019年度のANAの決算に影響を与えたのは、記憶に新しいところだと思います。財務分析する方の多くがここは、知っていることだと思いますが、明らかに営業利益が落ちているのは見て取れます。
<ポイント2>総資産は微減
一方で、航空事業はいわばインフラ産業であるため、簡単に飛行機を売ったり買ったりできません。そのため、総資産は、減っていますが、実は航空機の総額自体は増えています。変化が大きいのは、短期売買目的の有価証券の量が1千億円程度減っている点でしょうか。全体的に固定資産はほぼ総額で変化が無い状態です。
【財務分析】収益性
次に企業の儲ける力を分析します。
<ポイント1>総資産回転率があまり変わらない。
ROA=営業利益÷総資産です。投資した資産がどれくらい利益を生み出しているかを示します。
同じ業界で他社と比較すると、会社の稼ぐ力がわかりますが、今回のように、特殊な事情のある年は、あまり指標として見ても意味がないかもしれません。一方で、面白いのが、総資産と売り上げがほぼ同じであるという事です。売り上げも大きいのですが、非常に大きな資産を抱えて行っている事業ですね。
<ポイント2>ROAが向上(悪化)した原因
ROA=売上高営業利益率×総資産回転率 とも計算できます。
今回、ROAは売上高営業利益率が下がったことが原因で落ち込んでいます。ただ、この数字も、今年の数字を見て将来性を見るのは非常に難しいと思われます。
<ポイント3>原価率や販管費の推移
売上高原価率=売上原価÷売上高です。売上高原価率について、売り上げが下がっても、飛行機などのコストが下がりにくいため、全体的に利益が出にくい状態になっていっているのが分かります。
<ポイント4>各回転率に異常の兆候はないか
固定資産回転率を見てみます。ずっと固定資産比率は1倍前後を推移しており、固定資産(飛行機等)を持てば、売り上げも伸びるという相関がありそうに見えます。他の指標もありますが、ポイントは、2018年度の決算までは、非常に良好な推移を見せていたという事です。
【財務分析】安全性
財務面の安全性を分析します。
<ポイント1>短期的な資金繰りは大丈夫か
流動比率=流動資産÷流動負債です。短期的に支払わなければならない負債と支払いに使えるお金の比率を示すイメージです。一般的には200%を超えていれば良好とされています。
流動比率はあまり変化していません。流動資産と流動負債の総量は減ってはいますが、割合は変わらず、ここ5年間の推移を維持できています。
<ポイント2>負債が多すぎないか
負債比率=負債÷純資産です。自分の資産(純資産)と借金(負債)の比率を示します。
負債比率が多すぎると、利息の支払い負担が増します。一般的には100%以下が良好とされていますので、負債比率に至っては、この状況下でも低下傾向にあり、財務体質をここ5年かけて改善してきたのが見て取れます。
インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+受取利息等)÷支払利息です。
支払う利息に対して、何倍の利益を稼いでいるかを示します。明確な基準値はありません。
<ポイント3>長期の安全性
固定比率=固定資産÷純資産です。工場や店舗などの資産をどれくらい自己資金で賄っているかを示します。 一般的には100%以下が良好とされています。 今回は、固定長期適合率を見ていきますが、100%超えない程度に上手くコントロールしているのでしょうか、非常に安定して100%を超えないようにコントロールされているように見て取れます。
【補足】固定長期適合率
固定比率が100%より多い場合、固定負債を考慮した固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+純資産)を考えます。
長期的に使う固定資産なので、自己資金+長期的に返済する固定負債で賄っていれば良いとう考え方です。目安は同じく100%以下です。
【財務分析】キャッシュフロー(CF)
<ポイント1>営業キャッシュフロー(CF)はこの状況でもプラス
営業キャッシュフローは企業活動でどれくらいお金を稼いでいるかです。これがマイナスだと、きちんと利益を上げられていないことを示しています。ANAはこの状況でプラスですが、2020年度の決算はもしかしたら厳しいかもしれません。
<ポイント2>投資CFはマイナス、財務CFはプラス
成長している企業では、企業活動で稼いでいるお金(営業CF)以上に設備投資などが必要になります。投資CFが大きなマイナスとなります。2019年の間は、ANAは引き続きイケイケな状況でしたので、投資もしっかりと行っております。財務キャッシュフローはプラスですので、借金は返済しているようです。
<ポイント3>フリーキャッシュフロー
フリーCF=営業CF+投資CFです。企業活動で稼ぐお金と設備投資などに必要な資金の差です。
2018年度までの3年はギリギリプラスか、ギリギリマイナスのキャッシュフローでしたが、2019年度は予想外の出来事により、かなりフリーキャッシュフローが落ちてみてます。
※有価証券報告書データ更新日:2020-07-17
【財務分析】体力的に問題ないのか
ANAの分析を行いましたが、固定費が大きなビジネスですので、もう少し注視していく必要がありそうです。売り上げが下がると、販売手数料などが下がっているようにも見えるので、売り上げが下がった時の損益分岐点が高かったとしても、全く費用が下がらないというわけでもなさそうです。2020年度の決算が出たらすぐに再度、分析を行いたいと思います。
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