【財務分析】はじめに
本ブログでは、理系出身MBAホルダーの私が、財務分析をします。企業の安全性、収益性、安全性を分析し、皆さんの勉強や投資に役に立つ情報を発信していきたいと思います。そして、MBAや外資系企業でマネージメントをしている中で得た経験、大学を出てIT企業でエンジニアなどをしていた中で得た経験から、ビジネスにも役に立つ情報をここで書いていきたいと思います。
※本ブログで書いている分析内容などに誤りがあったとして、皆さんが投資などで損失を被っても、責任は負いませんのでご理解ください。
今回は、任天堂株式会社を外出自粛で、Nintendo Switchが抽選販売になるほどの人気になって、有名なゲームで「あつ森」という言葉ができたくらいの爆発的な売り上げを出している商品を持っている銘柄のため、取り上げたいと思います。ちなみに、無借金銘柄で有名な企業です。
【財務分析】成長性
企業の売上高や営業利益などがなぜ伸びているのかを分析します。
有価証券報告書、決算説明資料などで調べてみましょう。
<ポイント1>売り上げが2倍以上に
Nintendo Switchの大当たりで、2015年度の5000億円の売り上げから、2017年度には1兆円を超える売り上げになりました。さらにこの外出自粛の影響で、売上は伸びていくでしょう。
<ポイント2>営業利益がうなぎのぼり
2019年度は3,500億円となっており、非常に大きな利益を出しています。安定的に成長していますが、ゲーム業界は当たり外れが大きいため、あまり安心してみていられるわけではありません。
【財務分析】収益性
企業の儲ける力を分析します。
<ポイント1>売れれば売れるほど利益率の上がるモデル
ROA=営業利益÷総資産です。投資した資産がどれくらい利益を生み出しているかを示します。
同じ業界で他社と比較すると、会社の稼ぐ力がわかります。
売上高営業利益率がどんどん上がっていっていますが、開発などに大きなコストがかかる分、プラットフォームとして、ソフトのオンライン販売などを行っているため、売れると大きな利益を得られるモデルが出来上がっているのが数字でも見て取れます。
<ポイント2>販管費が下がっている
売上高原価率=売上原価÷売上高です。例えば、売上高原価率が上がった場合、以下の2パターンが考えられます。
A:原材料費などが上がり、売上原価が上がる。
B:競合との競争で販売価格が下がり、売上高が下がる。
→Bの場合だと、会社の将来が心配になりますね。
※販管費も同様の考え方です。
売上原価率も下がっているが、さらに、販管費比率も下がっている。これは販売数の伸びに対して、開発する人件費は基本的に大きく変わらないのが要因ではないでしょうか。
<ポイント3>回転率は特徴はあまりなし
回転率は大きな変化はなく、売り上げが上がっていても、大きく回転率が上がっていないのが見て取れる。
【財務分析】安全性
財務面の安全性を分析します。
<ポイント1>現金9,000億円も持っている
流動比率=流動資産÷流動負債です。短期的に支払わなければならない負債と支払いに使えるお金の比率を示すイメージです。
一般的には200%を超えていれば良好とされています。任天堂は、流動比率が500%程度あり、これはゲーム業界というところで、人気に大きく左右される業界のためか、流動資産を多く抱えていることが特徴である。特に、現金は9,000億円もある。
<ポイント2>無借金経営の任天堂
負債比率=負債÷純資産です。自分の資産(純資産)と借金(負債)の比率を示します。
負債比率が多すぎると、利息の支払い負担が増します。一般的には100%以下が良好とされています。任天堂は25%前後の負債比率であり、無借金経営なので、非常に低い負債比率となっています。
インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+受取利息等)÷支払利息です。
支払う利息に対して、何倍の利益を稼いでいるかを示します。明確な基準値はありません。
<ポイント3>圧倒的な固定比率の低さ
固定比率=固定資産÷純資産です。工場や店舗などの資産をどれくらい自己資金で賄っているかを示します。
一般的には100%以下が良好とされています。多くの企業の中でここまで固定比率が低い企業も珍しいです。ゲーム業界の中でも、優良企業ならではでしょう。
【補足】固定長期適合率
固定比率が100%より多い場合、固定負債を考慮した固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+純資産)を考えます。
長期的に使う固定資産なので、自己資金+長期的に返済する固定負債で賄っていれば良いとう考え方です。目安は同じく100%以下です。
【財務分析】キャッシュフロー(CF)
<ポイント1>営業キャッシュフロー(CF)は大きくプラスに
企業活動でどれくらいお金を稼いでいるかです。ここ3年は大きな営業キャッシュフローを生み出せています。
<ポイント2>投資CF、財務CFの状況から企業の資金需給を考える
成長している企業では、企業活動で稼いでいるお金(営業CF)以上に設備投資などが必要になります。投資CFが大きなマイナスとなります。 設備投資のための資金を得るために、資金調達をすれば財務CFはプラスになります。2019年度は投資キャッシュフローが大きくマイナスになっておりますが、投資キャッシュフローがマイナスなのは悪いことではないので、成長企業としてよい傾向だと思います。財務キャッシュフローは配当金がほとんどです。そのため、ここから財務キャッシュフローがマイナスに大きく振れることはないでしょう。
<ポイント3>フリーキャッシュフロー
フリーCF=営業CF+投資CFです。企業活動で稼ぐお金と設備投資などに必要な資金の差です。
ずっとプラスですし、Nintendo Switchが売れている間は何の問題もなさそうです。
※有価証券報告書データ更新日:2020-06-29
【財務分析】何の懸念もないのか
現金を9,000億円ももつ任天堂ですが、ゲーム業界は、浮き沈みが激しいため、無借金経営をしていくには、必要な額かもしれません。懸念があるという状況には今はないと思われます。一方で、次の筐体開発や、サービス開発もしていかないといけないため、コストは売れても売れなくても大きくかかります。企業の在り方や、売り方も大きく変わっていく状況の中で、任天堂がどんな価値を作り出すのかは楽しみに見ていきたいと思います。
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