【通信事業社分析シリーズ】①法人向けサービスから見る

本、資料の紹介

【通信事業社分析シリーズ】通信事業者が待ち受ける厳しい現実

最近、ドコモの低価格帯のサービスであるahamoが紹介されてから1週間も経っていませんが、通信キャリアって結局どこまで値段安くできるんだろっていう話があります。私は、SI事業をやっていた時代のおかげで、通信キャリアについても詳しいため、通信キャリアが今後、いかに美味しくない事業になっていくのかについて書きたいと思います。

【通信事業社分析シリーズ】データで見る業界的な厳しさ

初めに、通信キャリアが置かれている状況を総務省のデータを用いて、見てみましょう。

1.一般的なブロードバンドが伸びている。

まず初めに、以下のグラフを見ていただきたいのですが、固定ブロードバンドと移動系超高速ブロードバンドの契約数は右肩上がりです。FTTH(Fiber to the home)というのが、自宅に引き込む光ファイバーを用いた固定のインターネットサービスです。移動系は、携帯電話の契約数と捉えておいて良いでしょう。

このデータを見て、通信業界が順調だというのは、早計です。例えば、通信キャリアのKDDIはこの状況下で、AUひかりという固定インターネットサービスの契約数をほとんど伸ばせていません。市場の追い風に乗れていないのです。一方で、安価なサービスを提供している通信キャリアは順調に毛約数を伸ばしています。安価な固定インターネットの契約が増えれば当然、全体的な単価は下がりますので、契約数が伸びても、もうからなくなっていくわけです。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/image/n5202020.png
令和2年 総務省 通信白書より

2.法人向けサービスの方が儲かる?

一般的なインターネットしか契約する機会がない方が大多数だと思いますので、まず、通信キャリアの法人向けサービスの価格がどう落ちてきているかについて見ていきたいと思います。これは、総務省が出しているデータです。ここでわかるのは、市場の競争原理が働いている順番に、値段が落ちてきています。専用線については、値段が全く落ちていませんが、これは、インターネットとは異なる、閉じられた通信回線です。顧客のために、遠くの局舎から光ファイバーを引くことなんかも一般的です。WANサービスというのがありますが、これは、IP-VPNといった法人向けサービスとしては一般的なサービスなのですが、通信キャリアであれば法人向けに必ずと言っていいほど持っているサービスです。つまり単価が落ちていないサービスの契約数さえ維持できれば、企業として高利益な美味しい状態が維持できるわけです。

令和2年 総務省 通信白書より

3.高利益なサービスの縮小

価格が落ちていない専用線サービスの紹介をしましたが、その契約数が下になります。見ていただいたらわかりますが、この8年で、40%も契約数が減っています。もちろん、他のサービスの契約は伸びていますが、動く金額は倍以上変わります。つまり単純に減った分が他のサービスに移ったとしても、売上は半分に落ちるわけです。専用線とは非常に高いため、利益も大きいですが、売上が大きいという点もあります。

令和2年 総務省 通信白書より

【通信事業社分析シリーズ】どういう通信キャリアにとって厳しいのか

私が思っているのは、専用線を有してきた、大手通信キャリアの老舗が厳しいと思っています。特に、NTT系列とKDDIは専用線サービスを多く収めているため、安いサービスに移行すると、その顧客からの売上が半分以下になることも珍しくありません。

このままで行くと、携帯電話事業だけでなく、固定サービス側も儲け頭の法人向けサービスが厳しくなり、八方塞になっていくわけです。もはや、インターネットが安定しているため、IP-VPNといったサービスを利用するメリットがどんどんなくなっているのが現状でしょう。

新興キャリアも台頭してきており、大手の通信キャリアにとっては、顧客の選択肢が増えてくることで、例えバックボーンインフラは大手キャリアだったとしても、売上が下がることは避けられない状況である。これは急加速的に進む話で、顧客のリテラシーが上がれば上がるほど、コスパの悪いサービスから顧客が離れる。

このようにして、大手通信キャリアは、安くするか、非常に高付加価値なサービスを提供するか、顧客が流出しないような障壁を作るなどの対策が必要となり、どのように対策しても、今の売上や利益は出しにくい環境となる。そうなると、当然、働く人たちの福利厚生などを抑制する可能性などもあり、魅力はどんどん失われていく可能性が非常に高い。

【通信事業社分析シリーズ】まとめ

通信キャリアやインフラ事業は、今まで美味しい業界としての地位を確立していたが、実際は、厳し費い業界になっていくところもあるため、その点について、今後、様々な角度から分析して気いたいと思います。

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