【ハーズバーグの二元要因論】給与はモチベーションにつながるのか

組織

【ハーズバーグの二元要因論】とは

「ハーズバーグの二元要因論」とは、「ハーズバーグの動機付け要因・衛生要因論」ともいわれ、フレデリック・ハーズバーグという、アメリカの臨床心理学者が打ち出した理論です。

この理論は、MBAの中で、組織論などを説明するうえで、基礎的な研究として取り上げられることも良くありますので、講義を受ける前から知っていたも良いと思います。議論をより深めていくためにも、事前の学習をお勧めします。また、この理論を勉強する前に、もっと基礎的な部分として、【マズローの5段階欲求理論】【マクレガーのXY理論】5段階欲求理論と同じくらい重要な理論を書いてますので、興味があれば、同時にこちらも読んでいただければと思います。

【ハーズバーグの二元要因論】どんな理論か

このハーズバーグが唱えた、二元要因論は職場において、満足や不満を引き起こす要因はなんであるかという事を調査し、例えば、給与は、満足をもたらすよりも不満足をもたらす要因が大きいという事を説明しています。それぞれの項目に対して、説明をする前に、「満足をもたらす要因(Motivator Factors)」、「不満足を引き起こす要因(Hygiene Factors)」といわれて、区別せずに考えていると、この二元要因論が雰囲気でしか理解できないため、簡単に説明します。

満足をもたらす要因⇒動機付け要因

「満足をもたらす要因」というのは、「ハーズバーグの二元要因論」では、「動機付け要因」と呼んでいます。動機付け要因では、例えば、「認知」という行った成果にや行動に理解を示す行動は、モチベーションを上げる要因であるといわれています。部下がやったことを「認知(Recognition)」してあげると、モチベーションが上がるという事はあると思います。

このように、認知をすることによってモチベーションが上がる行為など、モチベーションがより上がる要因になるものを「動機付け要因」と呼んでいます。

不満足を引き起こす要因⇒衛生要因

一方で、「不満足を引き起こす要因」を「衛生要因」といいます。これは、「モチベーションを上げない要因」ではなく、「モチベーションを下げる(不満足を引き起こす)要因」という事です。

例えば、「上司との関係が悪い」という状況は、社員のモチベーションを下げる要因になるのはイメージしやすいと思います。一方で、上司との関係性は、部下のモチベーションを上げる要因には大きく貢献していないという事です。

動機付け要因と衛生要因を事例を用いてもう少し解説

ここで、給与を例に挙げたいと思います。給与が上がると、モチベーションが上がると思っている方がいると思います。これは、短期的にはもちろんそうでしょう。一方で、この動機付け要因の中では、大きなモチベーションアップの要因にはならないという結果が出ています。

一方で、給与が下がった場合、多くの方がモチベーションを下げてしまうのではないでしょうか。そして、「給与が下がったのは納得いかない」というのは、長期的にネガティブな感情を引きずるのではないでしょうか。

動機付け要因は、「モチベーションを上げる要因であり、モチベーションを下げる要因ではない」、そして衛生要因は「モチベーションを下げる要因であり、モチベーションを上げる要因ではない」ということです。

ハーズバーグの二元要因論のグラフ

そして、ハーバードビジネスレビューなどで紹介されてますが、以下の図が有名でしょう。研究から、動機付け要因の割合が高かったものと衛生要因の割合が高かったものをまとめました。

動機付け要因としては、「達成」、「認知」、「仕事自体」、「責任」、「昇進」、「成長」があります。衛生要因としては、「管理」、「上司との関係」、「労働条件」、「給与」、「同僚との関係」、「個人の生活」、「部下との関係」、「地位」、「保護」があります。これらをマネージャーが現場で理解してるだけで個別の対応がより具体化されていきます。

【ハーズバーグの二元要因論】マネージメントでどう利用するのか

では、このハーズバーグの二元要因論をマネージメントで利用すると考えるとどのようなことができるでしょうか。3つのタイプに分かれて考えていきましょう。

①モチベーションが高くない部下に対しての対応

モチベーションが高くない部下に対して、このハーズバーグの二元要因論から考えると、大事なことは「達成感を与える」、「認知(褒める)」、「責任のある仕事だと説明する」、「成長が感じられる環境を作る」でしょう。同僚との関係性を改善したり、労働条件を良くすることは、モチベーションが高くない人だとしても、不満が多くない部下にとっては、あまり大きなプラスには働かない可能性があります。まずは、簡単なのは、普段の業務で小さなことでもできていることを褒めて(認知)、今の仕事についての意義を説明(責任・仕事自体)し、一緒に数字が達成できた!などの達成感を与える事でしょう。

すべての人が同じ対応でよいわけではありませんが、優先順位をつけることで、より早くパフォーマンスやモチベーションの改善が見込めるかもしれません。

②モチベーションが高く能力のある部下への対応

モチベーションが高い部下は、1つ危険なことがあります。それは、衛生要因の部分で間違えると、すぐに、管理方法の食い違いや、上司との関係性が悪いという要因で、一気にモチベーションを下げ、転職してしまうなどのリスクを抱えるという事です。

モチベーションが高く、能力のある部下は、将来、組織を引っ張っていく存在でしょう。そこで、私であれば、まずは、「会社の方針・方法」についての意見を聞きます。変えられなくても、その不満をしっかり聞いてあげることが重要です。そこで上司との関係を壊さないようにしつつ、細かい管理をしすぎないようにします。「能力のある部下」と書いたのがポイントで、数字が落としているような部下であれば、当然管理が必要なので、昇進していくような部下の対応という意味です。

とにかく、衛生要因でつまづかかないようにするのが重要です。

③不満が多い部下への対応

不満がやたらと多い部下がいるとします。これは、他の部下からすると、「同僚との関係」という点で、ネガティブに働くでしょう。仕事の中で、上司の悪口を言う人、部下の悪口を言う上司などと一緒に仕事していたら、不満を生む要因になりかねません。

もちろん改善しなければならないことは直しますが、不満が多い人を昇進させたりしても、不満の種は消えないでしょう。そのため、少し能力が高くて文句言ってるなという人を抑えるために昇進さる人を見てきましたが、上手くいく可能性は低いうえに、他の能力が高い人を失いかねません。

不満が多い部下は、能力が多少高めでも、基本的には不満の種をつぶしつつ、難しければ、周囲への衛生要因の悪化を考慮し、転職や異動の方向性を一緒に考えるのが1つの手段でしょう。周りの人間の能力の低さを不満にしている部下がいたら、改善のしようがないうえに、もうその考え方を無理に変える努力も無駄になる可能性が高いので、他を見てもらいましょう。

【ハーズバーグの二元要因論】社員のモチベーションの難しさ

社員のモチベーションを上げていくために、この理論から注意するべき点を挙げたいと思います。今回書いた記事以外にも方法は多々ありますが、一例として紹介したいと思います。

動機付け要因:仕事の説明、褒めて育てる

上司が仕事をお願いするときに、目的やお願いする理由をちゃんと説明することです。そして、対応してもらった内容に対して、認知し、褒めましょう。そして、もっとよくやれる方法があれば教えてあげることで、さらに成長の機会を作ります。

昇進はその組織の予算や状況によるので、まずは上記の方法をベースにモチベーションを上げる方法を考えるのが良いでしょう。

衛生要因:給与で人をつらない。人間関係に手を差し伸べる。

マネージャーで、給与で人をつろうとする人がいます。「これ、頑張ってくれたら、来年の査定良くしておくよ」とか、言ってしまうパターンです。これは、プロスペクト理論の考え方からすると、大きな間違いです。

人は期待すると、そこが参照点になり、例えば、査定で仮によくできたとしても、あまり大きな嬉しさを感じなくなり、逆に失敗すると、大きな損失感を生み出してしまいます。

同様に、人間関係についても、不満が大きくなるため、社内に声の大きくて、不協和音を生んでしまう人がいた場合、注意が必要です。良い組織を作るためには、そういう人に変わってもらうのか、出ていってもらうしかないでしょう。

結果的にマネージメント手法は様々

ここまで様々な要因と方法を紹介してきましたが、結果的には、人の感じ方は千差万別です。まずは、こういった理論を何個か学んでみて、アイディアが思い浮かばないときは理論の中から対応方法を試してみるのが良いと思います。

【ハーズバーグの二元要因論】まとめ

ハーズバーグの二元要因論について解説しました。給与を上げることが、人のモチベーションを上げることにつながりにくいというのは、データで示されていることですので、モチベーションが下がっているときに、給与を上げることが改善につながらないのは理解いただけたのではないでしょうか。

まだしっくりこない方は、再度、別の記事も読んでみてください。これからも、様々なリーダーシップ理論やマネージメント理論を通して、マネージメントの言語化を進めていきたいと思います。

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