概要
今回は連結財務諸表と会計基準について説明していきます。
連結財務諸表と会計基準
今回は連結財務諸表と会計基準について説明していきます。はじめに、連結財務諸表からです。

みなさんは、親会社、子会社、関連会社などの言葉を聞いたことがありますか。現在の企業の多くは、一つの会社だけでなく、親会社を中心に企業集団を形成して、グループ全体で経営しています。

企業集団の例として、製造業のグループ経営を考えてみます。親会社が製品の企画や設計を行い、製造を国内や海外にある子会社が、販売はさらに別の小会社が担うパターンがあります。
このような企業集団では、製品の企画から、製造、販売までの一連の流れが、企業集団全体で行われていることがわかります。この製品を作る企業の業績を評価したい時、親会社の状況に加えて、グループ企業全体の経営成績が知りたいところです。

そこで、企業の財務諸表には、企業集団の財務状況を示す連結財務諸表と、個別の企業のみの個別財務諸表があります。大雑把に言うと、連結財務諸表は、親会社と小会社などを合わせたグループ企業全体の業績を示します。

ここでは、連結財務諸表の細かい説明は省略して、財務分析において特に知っておいて欲しいことを説明します。財務分析では、個別財務諸表と連結財務諸表のどちらを見れば良いか、迷うことがあるかもしれません。
初心者の方はまず、連結財務諸表を見てください。企業集団全体の経営状況をざっくり把握することが大切です。

次に、企業集団を構成する会社についてです。具体的には4種類ありまして、親会社、連結子会社、関連会社、非連結子会社に分かれています。

では、連結子会社、関連会社などの違いは何でしょうか。支配力基準という考え方が適用されます。対象となる会社の議決権が企業集団によってどの程度支配されているかです。
連結子会社は、親会社が実質的に支配している状況です。関連会社とは、親会社が重要な影響を与えている会社です。関連会社より連結子会社の方が、親会社に支配されている度合いが高くなります。

次に、非連結子会社です。親会社の支配が一時的、連結すると利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある企業が該当します。ここでは定性的な説明をしていますが、実際にはさらに具体的な基準が定められていますので、興味がある方は調べてみてください。

では次に、親会社の連結財務諸表に与える影響を見ていきましょう。連結子会社の場合には、親会社と連結子会社の各個別財務諸表を連結することになります。親会社と連結子会社の資産や負債などを連結し、内部取引は相殺消去します。

次に、非連結子会社と関連会社です。持分法(もちぶんほう)と呼ばれる方法を適用します。資産や負債などは直接連結せず、親会社が持っている株式の割合に応じて、損益などを財務諸表に反映します。
以上が連結財務諸表についての説明となります。複雑で理解しにくい部分もあったかもしれませんが、財務分析においては、必ずしも詳細を把握する必要はありませんので、ざっくりとこんなことがあったなあ程度で、イメージを掴んでください。

次に、会計基準についてです。ちょっと難しそうに感じるかもしれませんが、この項目も概要をさらっと説明していきます。

まず、会計基準とは何かと言うと、財務諸表の作成に関するルールです。ルールがばらばらだと、企業同士の比較もできなくなってしまうので、会計基準が決められています。

日本において連結財務諸表に使われている会計基準は、主に3種類あります。日本基準、IFRS(イファース)と呼ばれる国際財務報告基準、米国基準です。
なお、連結財務諸表で採用する会計基準に関わらず、個別財務諸表は日本基準で作成しなければなりません。

では、会計基準が違うと、財務分析する時にどんな影響があるのでしょうか。例えば、売上高を計上するタイミング、費用や損失として計上するかの判断基準などが異なる場合があるため、最終的には利益額などが変わることがあります。
また、勘定科目が一部異なり、損益計算書に営業利益の項目がない場合もあります。

次に、各会計基準の特徴を説明していきます。はじめに、日本基準です。日本の上場企業で最も多く利用されており、特に国内を中心に事業を行う会社では、採用する傾向があります。

次に、IFRS(イファース)です。国際的な会計基準で、グローバル企業を中心に採用されており、2021年1月時点で217社あります。簡素な財務諸表本体であることが特徴で、営業利益の項目さえ無い場合もあります。

次に米国基準です。米国で事業展開する一部の企業が採用しています。IFRS(イファース)の登場もあり、採用企業数は減少傾向にあります。2021年1月時点では、10社程度となっています。

以上のように、会計基準には主に3種類あることを頭に入れておくと、財務分析する時に、あれ、あの勘定科目がない、初めて見た勘定科目だなどと困った時に、自分で調べるきっかけとすることができます。
講義動画
読んでもなかなか頭に入らない~という方のために、先述の講義を動画にしています(カンザイ先生作成)。ぜひご覧ください。
まとめ
今回は、連結財務諸表と会計基準を説明しました。企業集団を構成する4種類の会社と連結財務諸表への影響、そして各会計基準の違いがイメージできましたか?
次回は各財務指標と財務分析について解説します。