概要
今回はキャッシュフロー計算書について説明していきます。
キャッシュフロー計算書から会社の状況を推定しよう
はじめに、前回学んだ減価償却費の復習です。

減価償却費の講義では、例えば有形固定資産の会計処理で、会計上の利益とキャッシュフローは必ずしも一致しないことを学びました。

具体的には、工場の製造設備として、300万円のロボットアームを現金で買った場合の会計処理です。みなさん覚えていますか?

購入した年に現金300万円を支出しますが、工場の設備は、何年も使うことができるので、利用期間に渡って費用として配分するんでしたね。ここでは、6年間に渡って均等に配分しています。このように、現金の支出と会計上の費用は必ずしも一致しません。

そこでキャッシュフロー計算書の登場です。キャッシュフロー計算書について復習します。

キャッシュフロー計算書とは、企業の資金が、期首残高から期末残高へと増減した過程を示すものです。ここでの資金とは、現金や貯金などです。

キャッシュフロー計算書はキャッシュの流れを大きく3つに分けて記載します。1つ目は営業活動によるキャッシュフロー、2つ目は投資活動によるキャッシュフロー、3つ目は財務活動によるキャッシュフローです。それぞれどんなことを意味するか、見ていきましょう。

1つ目は営業活動によるキャッシュフローです。本業で得たキャッシュを示します。企業として存続していくためには、本業で稼ぐこと、つまり営業活動によるキャッシュフローがプラスになることが不可欠ですね。

次に投資活動によるキャッシュフローです。投資活動で獲得、支出したキャッシュを示します。具体的には、設備投資、株式などの証券投資、貸付や貸付金の回収などがあります。ベンチャー企業などへの資本参加も含まれます。

次に、財務活動によるキャッシュフローです。資金調達に関する活動で、新規借入や返済、社債の発行や返済、株式の発行や配当支払いなどがあります。

間違いやすいのは、キャッシュフローのプラスマイナスです。会社にお金が入ってくる場合がプラス、逆に会社から出ていく場合はマイナスです。
営業活動、投資活動、財務活動の各キャッシュフローとも同じ考え方です。例えば、投資活動によるキャッシュフローは、「投資活動」という名前のイメージから、外部に投資するとプラスになると思ってしまうかもしれません。外部に投資すると、キャッシュが会社から出ていきますので、キャッシュフローはマイナスになります。ご注意ください。

では、今まで学んだことをもとに、キャッシュフロー計算書から会社の経営状況を読み取ってみましょう。

はじめに、パターン1として、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローがマイナスです。会社がどんな状況か推定してみましょう。
営業キャッシュフローがプラスなので、本業でしっかり稼いでいる状況です。投資キャッシュフローはマイナスなので、設備投資などをしている状況です。財務キャッシュフローがマイナスなので、借入金の返済などをしています。
つまり、本業で稼いだお金をもとに、設備投資をして、借金も返している状況です。健在な状態にある企業だということが推定できます。

では次に、パターン2です。営業キャッシュフローと投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがプラスです。営業キャッシュフローがマイナスなので、本業で十分に稼げていない状況です。投資キャッシュフローはマイナスなので、設備投資などをしています。財務キャッシュフローはプラスなので、外部からの資金調達しています。
本業で稼げていないのに、外部から資金調達して、投資できる企業などあるのでしょうか。例えば、将来有望な企業であれば、今後の成長に期待して外部から資金を調達でき、先行して設備投資できますね。

次にパターン3です。営業キャッシュフローがマイナスで、本業で稼げていない状況です。投資キャッシュフローがプラスなので、設備や証券などの資産を売って収入を得たことがわかります。財務キャッシュフローがマイナスなので、借金を返済している状況が推測できます。
つまり、本業で稼げておらず、借金を返すために、資産を売却している状況が浮かんできます。会社を立て直そうとしていることが考えられます。

このように、キャッシュフローの状況から会社の経営状況を推定できることがわかりました。ただし、今回紹介したパターンと実際の会社の状況は、必ずしも同じとは限りませんので、会社の売上高や営業利益、商品の販売量など他の状況と合わせて、経営状況を推定していきましょう。
講義動画
読んでもなかなか頭に入らない~という方のために、先述の講義を動画にしています(カンザイ先生作成)。ぜひご覧ください。
まとめ
今回は、キャッシュフロー計算書から会社の状況を推定する方法を説明しました。各キャッシュフローがどんなことを意味していて、各キャッシュフローの組合せから会社の経営状況を推定できることがわかりましたか?。
次回は連結財務諸表と会計基準について解説します。